「参戦を続けることを、あまり、喜ばしいと思う気になれない」
そういう旨のことを話すと、松下は穏やかな笑みをうかべつつ
「ぼくも、公道レースはモータースポーツだとは思っていませんよ」
とあっさり言った。
「公道レースをスポーツだと考えると、つじつまの合わないことがあまりにたくさんありますもん。あれはむしろ、冒険なんだとぼくは考えています」
そうか、冒険なのか。そのことばを聞いて、なぜ彼が公道レースに魅力を感じ、挑戦を続けようとするのか、すとんと腑に落ちたような気がした。公道レースを走ることは、登山や極地に挑むことと彼のなかではおそらく同義なのだ。
「冒険である以上、最後は安全に戻ってこなければいけない。ただの無謀な行為をやっているわけじゃないんだから。生きて帰ってきてはじめて、冒険が成立する。死んじゃあ、ダメなんです」
そこにまったく、異論はない。向こう見ずな思いきりが結果を左右するのなら、それはただの蛮行にすぎない。一見したところ外野からは、ぎりぎりの淵に生命を賭す環境へ身を投じているようにしか見えないとしても、じっさいの当事者自身は最大限の安全を自分のなかで確保しながら目標を達成し、戻ってくる。冒険とは、そういうものだろう。










